自然界の産物と工業製品について
私たちの住む日本という国が近代国家と呼ばれるようになって久しく経ちます。
坂本龍馬などの偉人たちの働きで、明治維新が成り、工業国家として日本は近代化を進めていきました。
先の大戦では、近代兵器による不幸も起きましたが、その後、工業製品は私たちの生活を豊かにしてくれて、今では工業製品のない生活など考えられない時代になりました。
工業製品があまりにも身近になったことで、私たちは一つの思い違いをするようになったように思います。
言葉にすると、「そんなバカみたいな話はないよ」と笑われてしまうかもしれませんが、多くのひとは、ひとを工業製品のように考えてしまっているように思うのです。
言うまでもありませんが、私たち、ひとは自然界の産物であり、工業製品ではありません。
自然の理から抜け出すことはできないのです。
工業製品、例えば車の調子が悪いとき、修理工場に持っていき、修理や修繕をしてもらいます。
部品を換えたり、オイルを入れ替えたり、グリスを塗ることによって、車は見違えるほど快調に動き始めます。
エンジンの載せ替えをすると、今までよりも遥かに力強い加速を実現できるかもしれません。
車は工業製品だから、何か手を加えたら、その瞬間からパフォーマンスが変わるということが起こります。
自然界の産物はそういうわけにはいきません。
植物に修理や修繕をすることによって、明日から急に実をたくさん付け始めることはありませんし、急成長することもありません。
ひとだって同じです。
昨日までできなかったのに、一回研修に参加したら、一回指摘したから、何かに気付いたから、今日から目覚ましく変わるなんてことはないのです。
自然界の産物が成長するためには、成長するのに必要な環境を整え、相応の時間を待つしかありません。もちろん環境を整えたところで、すべての植物が同じように育つわけではありません。
願望という種を、成長を期待する土壌に植え、適度な負荷という養分を毎日継続して与え続けることによって、ひとは少しずつ、しかし着実に成長を重ねていきます。
ただし、自然界の生き物は、負荷をかけすぎると、やがて崩壊に向かいます。
漁業でも林業でも、農業でも、適度の収穫ならば、永続して収穫をすることができるものですが、獲りすぎてしまうと、生態系が崩れてしまいます。
一度崩れた生態系を元に戻すことはそう簡単にはできません。
こんな話を聞くと、工業製品と比べて、自然界の産物はなんともデリケートで、弱々しく感じるかもしれません。
そんなことはありません。
自然界の産物が工業製品よりも遥かに優れているところがあります。
工業製品は、生まれた瞬間が最高のパフォーマンスを発揮できる時で、少しずつ劣化していきます。
修理や修繕により、延命はできても、生まれた瞬間のパフォーマンスには戻れないのです。
一方自然界の産物は、生まれた瞬間は、何もできません。
しかし、成長の環境で適度な負荷を与えられ続けることにより、昨日よりも今日、今日よりも明日、少しずつパフォーマンスを高めていくことができるのです。
これがひとの可能性は無限と言われる所以です。
工業製品は工業製品として、自然界の産物は自然界の産物として扱うことが、本来のあるべき姿である。
私たちはそう考えています。
株式会社あまひと 代表取締役
清田 芳宏
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