採用職人の知恵袋

女性管理者をどのように育成していけばよいでしょうか?

採用職人の清田です。

今回のご質問は、「女性管理者をどのように育成していけばいいか?」というものです。

そうですね、「2030の目標」を政府が掲げてはいるものの、その方法に関しては各企業に委ねられているので、お悩みの経営者も少なくないと思います。

補足をしておきますと、2030の目標というのは、「2020年に指導的地位に占める女性の割合を30%にする」と政府が掲げた目標のことです。

指導的地位というのは、役員ということではなく、課長相当職以上のことだそうです。

指導的地位に占める女性の割合を30%にするというのは、例えば課長職以上が30名の会社だとすると、そのうちの30%なので、9名以上が女性である状態になるということです。

男女雇用機会均等法が制定されたのが、1972年7月1日ですから、2020年の今からすると47年は経っています。

女性が社会進出するために法整備が行われて47年経っていて尚、指導的地位に占める女性の割合を30%にするというのは難しいということです。

このなぜ難しいのか?を解読して、ご質問いただいている女性の管理職の育成方法へと移っていこうと思います。

なぜ指導的地位に占める女性の割合が男性よりも少ないのか?

まず男女には生物学的な違いがあります。

何か特別な事がない限りは、子どもを産めるのは女性であり、男性ではありません。

そのため、出産をする女性は産前産後休暇や、育児休暇によって、数か月から数年間の働かない期間がでてくるのは自然なことだと思います。

今この場では、質問の意図と外れるので、女性が出産はしても、育児はすべて男性が行えば女性が出産により職場を離れる期間を短くして、逆に男性が職場を離れる期間を長くして、その差を無くしていくことができるのでは?という話はしないでおきます。

自然なこととは言え、仕事を離れている期間というのは、仕事の経験値や、職場でのコミュニケーションの積み重ねが一時停止している期間でもあります。

全く同じ知識レベル、能力レベル、役割の人がいるとして、10年間、みっちりと指定休日しか休まずに働いたAさんと、10年間、最初の4年間指定休日しか休まずに働き、3年間職場を離れ、戻ってきてから3年間の合計7年間働いたBさんと、どちらが業務遂行能力が成長していて、どちらが社内でのコミュニケーションの量が豊富か?と考えたら、Aさんの方が成長していて、社内でのコミュニケーションの量も豊富であることが自然です。

仕事の中で現れる課題を解決していく能力に長けていて、社内のコミュニケーションも豊富で、慕われている人が昇進していく仕組みであるならば、Aさんよりも、Bさんの方が指導的地位にまで登り詰める可能性は限りなく低いと言わざるをえません。

また、自分が責任者として、誰に大事な仕事を任せるのか?と考えた時に、女性は不利になることがあります。

大事な仕事ということは、誰にでも簡単にできる仕事ではないはずです。

そのため、経験年数も必要でしょうし、知識や能力の向上もしていかねば挑戦することすらできない仕事でしょう。

そして、その仕事を通して、学べることもたくさんあると思います。

大事な仕事を数多く経験している人の方が知識や能力のベースが高くなっていくということです。

それを前提に考えた時に、自分が、その大事な仕事を部下に任せる役割だとして、知識や能力が拮抗したAさんと、Bさんおどちらを任命するでしょうか?

その大事な仕事が数か月間かかるプロジェクトだとします。

すると、ふと頭をよぎってしまうのです。「もしこのプロジェクトをBさんに任せて、AさんよりもBさんの方が頭一つ能力が向上するとしよう。Bさん時期未定だけど、

いずれ1~3年間くらい会社をお休みしてから復帰したいと希望を出している。

Aさんに任せるとしたら、BさんよりAさんの方が頭一つ能力が向上するとしよう。Aさんは職場を長く空ける希望はないと言っている。さて、どちらに大事な仕事を任せようか?」

みなさんは、AさんとBさん、どちらに大事な仕事を任せるという意思決定をするでしょうか?

これは女性軽視という話ではなく、生物学的に考えると、男性に重要な仕事が集まりやすいということを意味しています。

この生物学的な違いだけが、指導的地位に占める女性の割合の目標を30%に掲げても達成できない理由ではないかもしれませんが、大きな理由であることには間違いないでしょう。

じゃあ、女性は指導的地位に就かない方が、いいのか?と安直に考えてしまうかもしれませんが、これは何の工夫もなければ、という条件付きで、Yesです。

ここまでは、管理職を目指す女性にとって、嬉しくない話をしてしまったかと思いますが、ここから変わります。

どう工夫をすれば、女性が管理職として活躍できるのか?という持論を展開していきます。

まず一つの勘違いを解かなければなりません。

それは、何か一つ突出した能力を備える人は、他の仕事においても優秀な成績を納める。という勘違いです。

専門的にはハロー効果と言います。

専門的な用語は覚える必要ありませんが、何かの分野ですごい人を見ると、他のこともできちゃいそうに見えるというのは、何となく想像できそうじゃないですか?

これは勘違いです。

英語で100点取れる人は、数学でも国語でも、スポーツでもデザインでも、音楽でも、コミュニケーションでも、人育てでも、マネジメントでも100点を取れるとは限らないということです。

むしろ、ある程度のレベルを超えてしまうと、何でも屋は、そのものに専業特化している職人には勝てなくなることの方が多いです。

つまり、何かに秀でる人は、何でもできるというのは勘違いと言えます。

じゃあ、どうして仕事で高い業績を出せる人が、人のマネジメントでも高い成果を上げられると考えるのでしょうか?

これも勘違いじゃないですか?

ここに気付かねばなりません。

もちろん高い業績を出せる人が、人のマネジメントでも高い成果を上げるために

必要な能力の一部を有しているということはあります。

たとえば、営業部で誰よりも高い成果を上げて昇進した人は、部下が成果を上げられなくて困っている時に、具体的なアドバイスをして、部下に成果の作り方を教えてあげられる可能性はとても高いです。

感性で営業をしている人では、人に成果を作らせることはできなくても、

自分がいけば売れるという場合もありますけどね、それでも、「この商品は必ず売れる」という強い確信を持っているかどうかでも、部下に成果の作り方を教えてあげられるレベルも高まりますので、やはり、自分が成果を上げられる人は、部下にも成果を上げさせてあげることはしやすいと言えます。

反対のことを考えると、自分が成果を作ることができない上司は、部下が成果が上げられなくて困っている時に、成果を上げるための具体的アドバイスをすることは難しいでしょう。

じゃあやっぱり、仕事で活躍する人=昇進する人となり、仕事で高い業績を出せる人が、人のマネジメントでも高い成果を上げられるというのは勘違いではないのではないか?

そう考えてしまっても不思議ではありません。

ここでまた、二つ目の勘違いを解かなければなりません。

部門長(上司)の役割は、高い業績を上げるモデルになることという勘違いです。

高い業績を部下にあげてもらうと言った時に、自分がモデルになり、自分の実体験を元に、やり方を伝授していく以外の方法はないのでしょうか?

プロのアスリートを見ると、全くそれは当てはまらないということがわかるかと思います。

イチローのお父さんは、イチローよりも野球が上手ではないでしょう。

そりゃ、イチローがまだ野球を始めて間もない時だったらイチローよりもお父さんの方が野球が上手だったでしょう。

しかしそんなのは束の間ですよね。

高い成果を作ってあげるには、必ずしも自分が高い成果を作れる必要もないということです。

じゃあ高い成果を自分が作れないのに、プロのアスリートを導けるコーチはどうしてプロのアスリートを導けるのでしょうか?

それは、

・どうすれば成果が上がるか?という方法論を知っている。

・理想の形と、現状の形の違いを感知して適切に伝えられる。

・調子が落ちたときにも、どんな時でも信じてくれて、裏切らなくて、「絶対できる!」と励ましてくれる。

・結果、この人の言うことは聴きたい、この人のために頑張りたいと思われる信頼関係ができている。

・相手が自分の価値を過小評価して思い悩んでいる時に、しっかりと話を聴き、その悩みに共感し、理解してあげられる。

こういう接し方ができるからだと思いませんか?

もうわかりましたよね。

指導的地位に占める女性の割合を高めようと思ったら、

・成果を人に依存するのではなく仕組みで成果をつくれるようにする

・人から慕われ、人を導いてあげられる能力を身に付けてもらう

・管理職が部下としっかり向き合える時間をつくる

ということです。

今回は、女性が指導的地位に昇進したいという気持ちがあることを前提に

話を進めましたが、女性がそもそも、指導的地位に昇進したいと思っていなければ、アプローチ方法は違いますよね。

そもそも、女性が望んでいないのなら、政府には悪いですが、女性を無理に指導的地位に引き上げる必要はないと思っております。

男性でも女性でも指導的地位を目指したい人を増やしたいということであれば、「責任者への昇進を望まない社員が増えてきて困っています」をご参照ください。

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