今回の質問は、理念やビジョンについてです。
「理念とかビジョンとか作っている会社が多いのですが、どれだけの効果があるのですか?」
どうお答えしていいか
悩ましい質問ですね。
どれだけの効果というものを
定量的に答えることができないので、
そもそも、
「理念やビジョンがどうして必要になるのか?」
という切り口で解説を進めていきたいと思います。
まずは言葉の定義からしていきます。
理念とはなんでしょうか?
goo辞書によると、
「ある物事についての、こうあるべきだという根本の考え。」
と書かれています。
ちょっとこれだと理解が
しづらいので、もう少し別の言葉で
表現してみると、
「その会社がこの世に存在している意義・理由」
つまり、その会社の「存在理由」
それが理念という言葉で表されている。
そう考えていただければよいかと思います。
会社というのは、
創業者という人が、
何かの意図をもって、この世に生を授かります。
「とりあえず会社つくったけどどうする?」
という会社もないことはないのかも
しれませんが、レアなケースだと
思います。
多くは、何か実現したいことがあり、
それを実現するために会社を起こす
ということになります。
その時に創業者が想ったことが、
理念という言葉に表されるものです。
まぁキレイなことを書きましたけどね、
実際に多くの企業様の支援に入らせて
いただいて思うことは、
そんなに理念を真剣に考えて作っていない。
その結果、理念は存在しているけれど、
お題目になってしまっている。
そんな会社様がとても多いのだと
気付いてしまいました。
理念がお題目である限りは、
理念が存在している価値を感じることは
できないんじゃないかな?
と思います。
せいぜい、
学生が選考を受けに来たときに、
「理念が存在しない会社ではなさそうだ」
と思ってくれるようになる。
というくらいではないでしょうか?
では、ただのお題目になって
しまっている理念と、
そうでない理念の違いはなんでしょうか?
それは、理念がその会社の存在理由で
あるのであれば、
その会社の目指すべき山の頂になります。
「うちのチームは、あの山の頂上を目指す
ために共に歩んでいるんだ。」
という全社員の目指すべき方向です。
じゃあ、どうして全社員が目指すべき
方向がきちっと存在していなければ
ならないのでしょうか?
人と人が一緒にいると、
良いこともあれば、良くないこともあります。
友達を想像してもらえると
わかりやすいかもしれません。
誰かから、
「あなたはこのグループだから」
と適当に振り分けられたグループにいる時と、
いつも一緒にいる気の置ける友達と
一緒にいる時では同じ感情でしょうか?
きっと違いますよね。
友達といる時には落ち着くし、
お互いの価値観も知っているので、
楽しいことも一緒に楽しめますし、
つらいことはお互いで共有して、
一緒に悲しむことだってできます。
勝手に振り分けられたグループでは
そうはいきません。
なぜか?
それは共有している時間が違う
ということと、そもそも友達は
一緒にいたいから一緒にいるだけで、
一緒にいなければならない理由はないのです。
一緒にいて心地よくない人は、
友達の輪から外れていき、
長い期間一緒にドラマを分かち合った
人たちだけが残るから、
いつも一緒にいたい仲間になるのです。
では、会社という組織では
それが通用するでしょうか?
そうめったに通用しません。
なぜならば、会社は皆給料をもらって
集まっているメンバーであり、
一緒にいたいから一緒にいるという
わけではないからです。
その中には、
自分とウマの合わない人だって
いることでしょう。
人間関係のストレスはこういう
ところからも発生しますよね。
じゃあどうして一緒にいるのか?
ただ、一緒にいて嫌なだけの人と
一緒にいることが報酬をもらえる条件
としたら、(そんなことはありえませんが)
おそらくあなたは別の職場を探すことでしょう。
プリンが嫌いという人は、
無理してプリンを食べ続けることは
できるでしょうけれど、
いずれどこかで爆発します。
「もう嫌じゃ!」
となります。
人は嫌なことを続けなければならないと
ストレスがたまり続けてしまうのです。
ところが、
自分とウマが合わない人がいます。
そして、
その人と一緒に仕事をするわけなのですが、
あなたが、仕事において抱えている課題に
が結構重い課題であり、自分には荷が重いと
感じているとします。
しかし、ウマが合わないその人は、
あなたが向き合う課題をクリアするのに
とても有用な能力を持っているとします。
するとあなたはどうするでしょう?
「ウマが合うとか、合わないとか
それは別にどうでもいい。
とにかく自分が実現したいことを
実現するためにはこの人の力が
必要なんだ。
この課題を解決するために、
この人と一緒に乗り越えよう!」
となるんじゃないでしょうか?
もちろん嫌がらせをし合っていて
お互いが憎しみ合っているという
レベルに嫌っていたら無理でしょう。
でも、ウマが合わないくらいでは、
仕事にそんなに支障はでません。
見えてきましたかね?
組織のメンバーが一致団結するために
絶対に必要な要素は、
「共通の達成したい目標がある」
ということなんですね。
理念というのは、
その大元に位置するものです。
理念という目的があり、
その理念を実現するために、
その道中でたくさんの目標が
存在します。
目的のない目標を追いかけ続けると、
人は精神をすり減らしてしまいます
からで、目的というのはとっても大事な
ものですし、
その目的の頂点である理念も
とっても大事なのです。
理念の話が長くなってきて
しまいましたけれど、
では「ビジョン」ってなんなの?
というところをお話しします。
色んな会社の理念って見たことありますか?
見ていて思ったりしませんか?
「確かにいいこと言ってはいるけど、
心の底から目指したいってほどのものでは
ないんだよなぁ」
そうです。
理念というのは、大元の目的となるため、
結構普遍的かつ広域に作られていることが
多いのです。
それが悪いということではなく、
そういうものと認識してください。
メッセージは広げれば広げるほど、
みんなから受け入れられるけど、
誰も心が惹かれなくなる。
狭めれば狭めるほど、
少数の人からしか受け入れられないけど、
熱狂的に惹かれる人がいる。
そういうものです。
だから、
理念という特性上、
そんなに心が強く動かされる
ような言葉にはなっていないことが
多いのです。
でも、大いなる目的ですから、
理念という旗印のもとに、
「自分たちはこれを実現するために、
ここに集まった。絶対に達成するぞ!」
という力を持たせたいと思います。
その役割を果たすのがビジョンです。
ビジョンというのは、
英語をそのまま日本語に直すと
「映像」となります。
ビジョンは映像なのです。
例えば、
「幸せな家庭を築きたい」
という理念を持った家族があるとします。
これが受け入れられない人は
ほとんどいないと思います。
しかし、幸せな家庭って
どんなでしょうね?
きっと人によって思い描くものが
違うものだと思います。
じゃあ、少し具体的にしてみましょう。
「将来は庭付きの戸建てに住みたい。
そのおうちは白をベースとした洋風の
建物がいい。
庭には季節の花がたくさん咲いていて、
子ども達がお花に集まってきた蝶々を
追いかけて遊んでる。
私は、お庭のテラスで、
ちょっとしたお菓子とダージリンで
アフタヌーンティーを飲んでる。
こんな家庭を築きたいんだ。」
いかがでしょうか?
情景が映像として頭に
浮かんできましたか?
これがビジョンです。
理念という組織が向かう
大元の目的が存在しています。
しかし、
理念だけでは心が動くほどの
映像が頭に浮かばない。
だからビジョンというものを作り、
「絶対コレを実現したいんだ!」
のコレを共有するのです。
そしてこのビジョンこそが、
旗印となり、
「このビジョンを一緒に実現したい人
この指とまれ」
と採用もできるのです。
理念とビジョンがお題目ではなく、
本質的なものとして存在していることが、
組織にどのような影響を与えるか
ご理解いただけましたでしょうか?
本当は、理想の組織というものを
考えるのであれば、
理念とビジョンだけでは
足りないのですけどね。
理想の組織ってどんな組織なのか?
というのはまたの機会にお伝えしたいと思います。