採用職人の知恵袋

ベテラン社員の古いやり方を変えたい

採用職人の清田です。

今回のご質問は、

「ベテラン社員の古いやり方を変えたい」

というものです。

これはまた難しい質問ですね、

そして、同じような悩みを持つ方も

たくさんいると思います。

ではまず、

ベテラン社員がどうして古いやり方を

変えようとしないのか?

ということから考えていこうと思います。

どうしてだと思いますか?

自分が20歳で仕事を始めて、

35年手に職を身に付けてきたとします。

20歳から仕事を始めたということは、

2020年を55歳とすると、

1985年から仕事を始めたということに

なります。

この頃は、

バブルの絶頂期ですね、

入社してからおおよそ6年間

バブルを謳歌しています。

1991年にバブルは崩壊し、

日本の景気はがったがたに

なっていきます。

ちなみに、

バブル期入社っていう言葉は

イメージが悪いですよね。

それはどうしてかと言うと、

今もそんなに変わりませんが、

当時も相当な人手不足でした。

なので、採用基準を満たしているかどうか

なんて二の次で、猫の手でも借りたいと

言わんばかりに、誰でも彼でも採用したのです。

狂乱景気ですからね、

誰が何をしていてもモノやサービスが

飛ぶように売れ行くわけです。

入社をしてから、

ほっといても飛ぶように売れる時代です。

当然自己成長なぞ期待できるはずも

ありません。

考えても見てください。

いくら模擬試験を受けても

1+1=?

みたいな問題ばかりで皆100点

どこの大学でもA判定

そんな状態で勉強しますか?

無理ですよね。

ストイックで通っている僕ですら、

堕落街道まっしぐらな自信があります。

きっと、

簡単だけど膨大な仕事量をこなす

だけで過ぎ去った6年間だったのでは

ないでしょうか?

運命の1991年が訪れます。

徐々に上り続けてきた

ジェットコースターがフジヤマも

真っ青というレベルで急降下

バブル崩壊直前に

ぎりぎりで資産を売り抜けた勝ち組と、

持っていた資産の価値が暴落して、

ただただ売れない資産と莫大な借金を

抱える負け組に分かれることとなりました。

ここでも想像してみてください。

26歳で1億5000万円の

家を持っています。

当然すべて借金で買いました。

半年後には1億8000万円で

売り抜けると思っていたのです。

しかしその家の価値は暴落して、

売っても800万円にしかなりません。

借金残高は1億5000万円です。

どんな生活をしますか?

「今は我慢の時だ」

と思って、一生懸命借金返済に

追われる日々を送ることになるでしょう。

(結局我慢の時は30年経っても

終わらないのですけどね)

で、不遇の時に考えるわけです。

「あぁ、変な口車に乗るんじゃなかった。

世の中そんなうまい話しなんてあってたまるか」

周りを見ても、

自分だけでなくみんな借金返済に一生懸命で、

お財布のひもは固く閉じられています。

みんなお金を使わないわけですから、

当然自分が仕事で何かを売ろうとしても、

誰も買ってくれません。

「そんなの買うくらいなら

借金返済するわい!」

個人が買わないということは、

企業も設備投資なんてしませんからね、

数億から数十億という初期投資をするのは、

その後5年とか10年で初期投資以上の

利益を上げられるという見込みがあるからです。

誰もモノもサービスも買わない時代に、

そんな初期投資、どこの会社もしないわけです。

設備投資がないということは、

生産性の向上も起こりません。

進歩のない仕事

財布の口を固く閉ざすお客さん

バブル期に採用しすぎて

人余り甚だしい会社

仕事も減り、会社に必要な人員も減り、

人員整理をしたい企業経営者

いつ自分に白羽の矢が立つか

わからない恐怖と疑心暗鬼

ものすごい借金を背負っているので、

どんなに会社で冷遇されても

辞めるわけにはいきません。

耐えて、耐えて、耐えに

耐えまくりました。

次の経済成長を夢見て、

とにかく心を無にして

耐え続けるのです。

人生の春だったバブルの6年間が去り、

人生の冬と思える厳しい6年間が過ぎ、

20歳だったその方は32歳になります。

ここでアルマゲドンが起きてしまいます。

1997年

橋本内閣による消費税増税

日本中に隕石でも落ちたのか?

と言わんばかりに会社が沈没していきます。

消費税って経営者からすると

とんでもなく怖く残酷な税金なのですよ。

富めるものからも、貧するものからも

平等に徴収するのが消費税ですからね、

貧するものの最期の希望を容赦なく

刈り取っていきます。

デフォルメして書きましたけれど、

中小企業の経営者の自殺者が急増です。

もうシャレにならない事態です。

しかも、

明けない夜は来ないと言いますけれど、

暗黒爆弾はさらにさらにでした。

4年後の36歳になり、

社会人として脂の乗ってきている頃です。

「痛みを伴う構造改革!」

と、のたまうライオンが

景気の下支えをしていた

セーフティネットをバッサリ

切っていきます。

みなさん信じられます?

個人は借金返済に苦しみお金を使わない

企業も同様に借金返済していますし、

設備投資しても回収の目途が立たないから

お金を使わない。

景気悪化を食い止めるために、

お金を発行する力を持つ政府がお金を使って

ぎりぎりのところで景気の下支えを

していたのです。

そんな状態で、

「国民が苦しんでいるのに、

政府がお金を使ってどうする!

聖域なき構造改革で無駄をなくせ!」

と唯一お金を使える母体だった

政府の財布の口を縛りにいく

総理大臣がいたのですよ。

もう、日本国民全員を飢えさせる

目的としか思えない政策です。

どうしてそんな政治家に人気が

集まったかというと、

ヒーローに見えちゃったんですよね。

さて、ヒーローに見えた総理大臣なのに、

どうしてこんなに採用職人に目の敵に

されるのでしょうか?

目先のことだけみたら、

国民のヒーローに見えます。

だって、自分たちは半額シールの

貼ったお肉をスーパーかけずりまわって

探しながら日々の食卓をいかに

安く済ませるかに一生懸命な時に、

テレビの中のライオンは言うのです。

「政府にも我慢させろ!」

不満の溜まっている国民は思いますよね。

「なんて国民の気持ちを理解してくれる

政治家なんだろ。いいぞ!もっとやれ!

政府の無駄をカットさせろ!

NTT解体だ!日本郵政解体だ!

金持ちなんて許さねぇ!

聖域ない構造改革万歳!!!」

そりゃスカッとしますよ。

お腹空いているからといって

我慢していたお米の種をぜーんぶ

食べてしまうくらいの爽快感です。

そりゃその瞬間は気持ちいいですよ。

でもね、世の中で唯一お金を使って、

景気を支えられるところから、

お金を奪っちゃったら、

誰がお金を使うんですか?

一瞬の快楽に踊らされて、

日本の未来の芽は刈り上げにされて

いってしまいました。

失われた10年は失われた20年になっていきます。

借金は少しずつ返済していき、

年金がどれだけもらえるか不安だし、

相変わらず仕事が儲かるようになる

兆しは見えない。

政府には裏切られてきたし、

会社にも裏切られてきた。

もう誰も信じられねぇ

信じられるのは自分とお金だけだ

よし、このなんとか貯めてきた

お金を運用して老後資金を作らないと!

働いても報われないと、

自分が働くのではなくお金に働いてもらおう

と考えるようになるのですよね。

(正しい選択ですけど)

36歳だったその方は43歳になりました。

その年の暮れに、

何やら変なニュースが飛び込んできます。

「ん?なんだリーマンブラザーズって?

マリオブラザーズか?」

2008年11月

アメリカの低所得者層向け住宅ローン

通称サブプライムローンが破綻

この巨大なバブル崩壊によって、

世界同時不況に突入

老後資金になるようにと

預けていた投資信託が吹っ飛びます。

もう夢も希望もあったもんじゃない。

望みをあえて言うのならば、

このまま何も起こらずに静かに定年退職を

迎えたい・・・

さーて前振りがとんでもなく長くなりましたが、

そんな社会人一年目から35年経って、

ベテランと言われる55歳になった人に

何をしてもらいたいんでしたっけ?

「今まで信じていたものは

もう時代遅れで役立たずだから、

こっちに変えてもらえませんか?」

ということを伝えたんですよね?

あなたが55歳のその立場だったら、

その提案を素直に受け入れられますか?

これまで大層苦労をしてきて、

それでも借金返済をするために、

一生懸命仕事に取り組んできたのです。

その35年の結晶を

時代遅れのクズだと言われた

その気持ちを想像できますか?

客観的に冷静に見たら、

きっと正しいんですよ。

ベテランの古いやり方よりも、

今の時代に合わせた新しい方法を

取る方がよっぽど正しいんですよ。

それが正しいからこそ、

その正論を受け入れたくないですよね。

自分の人生のすべてを否定されて

しまうような感覚です。

しかも、

ドライな言い方をしてしまうと、

あと5年平穏にいられたら、

定年退職なんですよ。

若者の意見に耳を傾けず、

5年間耐えたらいいのですよ。

これまで35年耐えてきたのに

比べたら一瞬の出来事です。

と、考えたら、

ベテラン社員古いやり方を変えさせる

ということがいかに難しいか、

ということが理解できたのではないでしょうか?

さて、

ベテラン社員は変えるのではなく、

あと5年辛抱するというのも一つの手では

あると思います。

しかし、

それではあまりにも悲しいですし、

ベテランにも若手にも良い選択とは

思えません。

(まぁパワーがかかるからそうしたい気持ちは強いですけど)

じゃあどうすればいいか?

また想像してみてください。

会社に裏切られ、

政治に裏切られ、

お金に裏切られ、

でも、ずっと35年間

会社で自分の役割を全うし続けて

きた功労者です。

しかも自分でも薄々感じています。

自分のやり方はもう今の時代では

通用しないのかもしれない。と

そんな人は何を求めていると

思いますか?

自分の人生の肯定ではないでしょうか?

自分ですら、

自分の人生を肯定するのが難しい。

でも、一生懸命やってきた、

それを認めてくれたら、、、

嬉しいじゃないですか。

これからの5年間、

今までの35年で培ってきた経験と、

若手の持つ新しい情報を組み合わせて、

今後の打つべき手を考えるのです。

教えを乞うのです。

これまでの頑張りがあったから、

溜まってきた知見を活かすのです。

若手が弱いところをサポートできるほどの

人生経験を持ち合わせています。

その役割を担ってもらうのです。

実際に現場でばりばり動くのは

若手でいいでしょう。

もはや55歳になって、

新たな方法をインストールしてもらって

若手と同じ土俵で戦わせるのは酷って

ものです。

若手は若手、

ベテランはベテランの

活かし方を模索してください。

ベテランが、自分の人生を肯定してもらった

自分のこれまでの35年間はこのためにあったのか!

と思ってくれたら、

最高の顧問、相談役、コーチになって

くれるのではないでしょうか?

ちょっと理想論ではありますが、

そんな関わりになったら

すごくいいなぁと考えています。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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